ベトナムでの企業買収(M&A)のポイントと成功の秘訣

はじめに

ベトナム市場は急速に成長しており、多くの日本企業が進出を検討しています。その中で、現地企業の買収(M&A)は、ゼロから法人を設立するよりもスピーディーに市場参入できる手段の一つです。しかし、ベトナムのM&Aには特有の法律や文化的な課題があり、慎重な対応が求められます。本記事では、M&Aの基本的な流れ、注意点、成功の秘訣について解説します。

1. ベトナムのM&A市場の現状

近年、ベトナムではM&Aが活発化しています。主な要因として以下が挙げられます。

  • 経済成長の加速:年平均6~7%のGDP成長率を維持

  • 外資規制の緩和:一部業種では外資の所有制限が緩和

  • スタートアップの台頭:ITや小売業界を中心に買収案件が増加

特に、日本企業によるM&Aは、製造業や小売業、IT分野で積極的に行われています。

2. M&Aの基本的な流れ

① ターゲット企業の選定

M&Aの第一歩は、買収対象となる企業の選定です。候補企業の選定では以下のポイントを重視します。

  • 事業の成長性と市場ポジション

  • 財務状況(収益性・負債など)

  • 経営陣や従業員のスキル・文化

② デューデリジェンス(DD)の実施

買収前に、対象企業の財務状況や法務リスクを徹底的に調査するプロセスです。以下の分野でDDを行います。

  1. 財務デューデリジェンス(帳簿、税務、キャッシュフロー)

  2. 法務デューデリジェンス(契約、ライセンス、知的財産)

  3. 人事・組織デューデリジェンス(労働契約、組織文化)

③ 交渉と契約締結

DDの結果をもとに、買収条件(株式比率、価格、支払い方法など)を交渉し、最終契約を締結します。

④ 買収後の統合(PMI)

M&Aの成功のカギを握るのが、Post-Merger Integration(PMI)です。買収後の経営統合を円滑に進めるため、以下のポイントが重要です。

  • 経営方針の統一:日系企業の管理方法を無理に押し付けず、現地文化を尊重

  • 人材の定着:優秀な現地スタッフの流出を防ぐための制度設計

  • 業務プロセスの整備:会計・税務・法務の仕組みを日系企業基準に適合させる

3. ベトナムM&Aの注意点

① 外資規制の確認

ベトナムでは、業種によって外資の出資比率が制限されている場合があります。例えば、以下の業界では外資100%出資が難しいことがあります。

  • 小売業:ベトナム企業との合弁が推奨される場合あり

  • 不動産業:外国企業は土地を所有できず、リース契約を結ぶ必要あり

  • 広告業:外資出資比率に制限あり

② 税務リスク

M&Aでは、企業買収後の税務リスクにも注意が必要です。特に以下の点は慎重にチェックする必要があります。

  • 過去の未納税金や税務調査リスク

  • 買収価格にかかるキャピタルゲイン税

  • 繰越欠損の扱い(買収後に引き継げるか)

③ 文化・マネジメントの違い

ベトナム企業と日本企業では、組織文化やマネジメントスタイルに大きな違いがあります。例えば、ベトナムでは「家族経営」が多く、買収後も創業者が影響力を持ち続けるケースがあります。企業文化の違いを理解し、慎重に統合を進めることが成功のポイントです。

4. 成功するM&Aのポイント

① 事前の市場調査を徹底する

ターゲット企業がどの市場でどのようなポジションにあるのかを詳細に分析することが重要です。特に競合分析を行い、買収後にどのような成長戦略をとるかを明確にしておく必要があります。

② 信頼できる現地パートナーと協力する

ベトナムのM&Aは、現地の法律や商習慣を理解する必要があるため、信頼できる現地の会計事務所や弁護士と連携することが不可欠です。

③ PMI(買収後の統合計画)を綿密に立てる

M&Aの成功は、買収後の経営統合にかかっています。特に人材の流出を防ぎ、組織文化を統一するための施策を事前に準備することが重要です。

5. まとめ

ベトナムでのM&Aは、日本企業がスムーズに市場参入するための有力な手段ですが、慎重な準備と適切な対応が求められます。特に、外資規制、税務リスク、文化の違いなどを十分に理解し、適切な戦略を立てることが成功のカギとなります。

AGSベトナムでは、企業買収の戦略策定からデューデリジェンス、買収後の経営統合まで、M&Aをトータルでサポートいたします。ベトナム市場でのM&Aに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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